久しぶりの夜行

先日、久しぶりに「はまなす」にのって、札幌に行きました。「はまなす」とは、青森札幌間を走っている急行電車で、こちらから行く場合は、夜の22時45分だったかな?に青森を出発し、6時7分?に札幌に到着、あちらから来る場合は、22時00分に札幌出発で、青森には、5時47分?に到着です。大曲からは18時34分の鈍行、秋田からは19時30分の特急に乗って、札幌に向かいました。
なんだかんだと、12時間ほどの電車の旅です。今は、仕事の関係で、秋田ー札幌間は飛行機を使っていますし、今後もおそらく飛行機での移動が主になると思われるので、今回が実質最後の「夜行列車での旅」であったと思われます。
今回の旅の目的は、「お世話になった先生の最終講義を聞くため」でした。大学院の博士課程に入り、北海道での生活が始まったものの、研究や札幌での生活に愛着がわかず、あーやめたいやめたいと思っていたときに、他大学でのTAのお話を頂き、そのときにお世話になったのが、今回退官される先生。
当時、60歳半ばのその先生は、年齢のわりに、アグレッシブで、生徒に対する愛情があり、権威主義的な雰囲気が全くない先生でした。人間、年齢を経るに従い、良くも悪くも、物事に諦めが出てきて、若年層に対する対抗意識から、無駄に権力を振るうようになってしまいます。よく分からない頑なさをご披露する人たちも登場します。
でもねー、その先生は、全くそんな様子が見られない先生なのです。下っ端に任せればよい仕事も、自分でこなそうとするし、学生の対応も、最後まで責任を持とうとする、自分勝手な愛情で、接しようとはしない、自分の下で働く人たちへの配慮も事欠かず、私なんかも、毎回、あたたかな声をかけていただきました。
研究者はおかしな人が多いけれど(もちろん自分も含めて)、そんな環境に疲れてしまっていた私にとって、先生との出会いは、素敵なものでした。そんな先生が、今回退官されるとのことで、お酒を携え、札幌に行ったわけです。行ってみたところ、なんと若人が私くらいしかいない・・・。50歳以上の人たちがほとんど・・・。来てはいけなかったかしら?と思ってしまいましたが、「こじんまりとやりたいから、大げさに人を集めないで欲しい」と先生は話されたとのことで、これまた、先生らしいご配慮。やはり、素敵だ。というわけで、私にまで話がつながっているとは思わなかったとのことで、私がいることに大変ビックリされておりましたが、大曲から夜行で来たことに対して、とても感謝をしていただきました。ね、こういうところがまた素敵でしょ。
懇親会では、先生の人柄をみんなが愛しているんだな〜ということが分かるような皆さんの酔い方で、若輩者の私ではありますが、とても楽しませていただきました。外部から来た人たちから挨拶を〜ということで、私も、一言お話させていただいたのですが、それに対しても、「彼女はね、云々」と周りの方に説明してくれる、この配慮の素晴らしさ。ね、ね、素敵でしょ。人に差をつけずに、関わった相手に対して、責任をもって配慮を怠らない先生の姿勢は、本当に見習うべきものだなといつも思います。
先生が退官され、そして、私も人生の新たなスタート地点にいるわけで、なんか不思議な関係だなと思いつつ、先生に出会えたことを感謝しながら、帰路につきました。今回退官された先生、そして指導教官と、私は、先生たちには本当にめぐまれたな〜と思う、研究生活でした。そんなことをつらつらと考えるには、夜行電車は最高の時間を提供してくれました。ゴトンゴトンと鳴り響く線路の音と一緒に、先生方との付き合いをひとつずつ思いだし、朝に乗った特急電車では、ヤマの稜線を浮かび上がらせている朝焼けをみながら、新しい生活に思いを馳せ、素敵な時間を過ごすことが出来ました。いままで、私を北海道と秋田につながらせてくれていたこの「はまなす」そして「いなほ」に感謝をして、大曲に帰ってきました。

ありがたやありがたや。

あ、そういや・・・。退職に際して、酒を上げるというのは、秋田文化なのでしょうか・・・。退職なら酒だろうと、刈穂の蔵に、お酒を買いに行って、えっちらおっちら札幌に持っていたのですが、そういったものを誰も持ってきておらず・・・なんか変にでしゃばってしまったなと反省をしました。そのことを母さんにはなしたら、「あー秋田文化かもね」と・・・。おいおーい。でも、今回選んだお酒はですね、三年古酒なんです。寝かせることによって、ふくよかな香りと柔らかな味が表現できるのだそうで、その説明文をみて、「あ、先生だ」と思って買いました。だから、後悔なし。退職後に、ゆっくりと味わっていただければと思います。