気分転換と思いつつ…

論文を書いているときに、友達と「活字は読みたくない」と話しています。学術書を読んだりで「活字」を読むことに疲れているから、「活字」を見ただけで、うっとなるってことですな。あと、論文に労力を注いでいるときに、他の「活字」を理解するために、労力を使いたくないって言うことですな。なので、私の場合は、新聞とか時事ネタの雑誌は読みたくなくなります。いろいろと考えなければならないから。
しかし…、小説にはまってしまうのです…。論文がはかどらないとき、あーあって思って、小説のページを一枚、一枚開いていくと、気がつくと、200ページとか読んじゃっています。もちろん、小難しくないものね(昔のはだめ。太宰治とかは、考えちゃうからすすすまない、中島敦なんてもっと無理)。違う世界に連れて行ってくれるからいいんですよ。っていうか小説にはまるときは、まだ本気モードではないって事だろうな…。で、昨日はまったのはこれ。

臓器農場 (新潮文庫)

臓器農場 (新潮文庫)

夜ご飯にお弁当を買いに行ったついでに、隣の古本屋で買いました。最近はまっている帚木蓬生のもの。閉鎖病棟(★★★★★)空夜(★★★☆☆)三度の海峡(★★★★☆)カシスの舞(★★★☆☆)ってな感じで、閉鎖病棟が五つ星なら、臓器農場は★★★★☆、4.5星って感じかな。弁当を食べながら読んでたわけ。んで、6時半から食べて、七時半から作業を始めようと思ってやってたわけ。気がつくと、七時半に205ページ。一応、小説を閉じたけど、気になって気になってしょうがないわけ。ちょっと作業が進んでは、一節、またちょっと作業が進んでは一節を繰り返していたら、やはり止まらなくなった。で、10時前に帰ることにしました(笑)。結果、夜1時半に読了。いやー面白かった。
閉鎖病棟を読んだときは、最後の最後に、これまでのシーンが走馬灯のように頭をめぐり、泣けてきた。小説を読んでそんな思いになってのは、カズオイシグロの「日の名残」以来。登場する人々の優しさがパズルのように組み合わされ、ハッピーではないんだけど、どこか温かく…。
空夜は、まあ、いいんでない?って感じかな。結婚や恋愛についていろいろ考えるかな。面白くも面白くなくもないかな…。
三度の海峡は、前、感想書いたから省略。
カシスの舞はな〜。悪くはないんだけど、先が読めてしまうんだよな。んで、南フランスの情景を描き出すことに、作者が注意を払っているため、文章が読みにくいと言うかなんと言うか。その情景がイマイチ、作品全体につながっているようでいないようで。そういう無駄なことを読者に考えさせるような点があって、私は余り好きではない。あと、人物のパーソナリティーがイマイチ単純な感じだな。魅力的ではない。帚木蓬生作品を一番最初に読む人にはお勧めしませんね。
んで。臓器農場。小児の臓器移植がテーマ。これは面白かった。上にも書いたように、一気に読んでしまった。臓器移植や医療現場のあり方について考えさせられる作品だな。カシスの舞に比べて、登場人物一人ひとりが特徴的に描き出されていた。無理がない感じ。日本を舞台としているから、気負わずにかけたのかな。
臓器移植をすれば助かる命がある、しかし、小児であるために、その臓器を得ることは難しい。未来ある命をどう救えばいいのか、そのためには何が必要なのか…。考えれば簡単に答えは出る。小児の臓器移植のためには小児の臓器が必要なのである。それを育てていくと言う話。だが、そこには多くの問題が孕んでいるのも事実。人はいつから人なのか。最後には、事件は解決するけれど、そのために、もちろん助からない命も出てくるわけだ…。それをどう受け止めていくか。あまり書くとネタばれになるので、内容はここでストップ。
登場人物の中で、間島看護婦という看護婦がいる。彼女の生き方が切ない。自分の子供が、生後間もなく死んでしまったという過去がある。臓器移植が出来れば助かった命。小児の臓器移植には小児の臓器が必要。その考え方に徹底して取り組んできた人。だけど、いつの間にか違う方向に組み込まれてしまう。。。はあ。そして、ケーヴルカーの車掌さん、藤野茂。カレがいなければ、物語全部がまとまらなかったかもしれないな。無理がなく、挿入されておりよかったよかた。全体的にとてもキレイな作品でした。個人的には、最後のほうに出てくる、金子安一の回顧のところ?かな。あれをもっと上手く分散できなかったのかな…。ちょっとそこが残念。